保険適応ができる矯正治療
外科的矯正治療
通常の矯正方法では治療が困難な場合に、顎の骨を手術で切って動かす治療を行うことがあり、その方法を「外科的矯正治療」といいます。手術は総合病院の口腔外科を専門とする医師が行い、手術の前後はワイヤーを使った通常の矯正治療も必要です。
手術前の歯列矯正
手術後の歯列矯正
まずは、上下の歯の配列を整えて、手術後に安定する正しい咬み合わせになるよう準備。そして手術後には、新しい顎の位置でしっかりした咬み合わせが得られるように仕上げの矯正治療をします。手術は口の中から行いますので、顔の外に手術の傷が残ることはほとんどありません。
症例外科的矯正治療を行った受け口の症例(女性 30歳)
主訴:受け口が気になる
症状:骨格性反対咬合
初診時年齢:30歳1か月
治療期間:マルチブラケット装置を2年8か月使用
治療費:矯正治療費は(健康保険3割負担で)207,123円、他に連携医療施設で外科手術の費用がかかります
副作用とリスク:手術後に(下顎の)オトガイ部周辺に神経麻痺を生じる可能性が幾分かありますが、外科手術を行った施設で適切な治療を行って頂きます。歯を移動すると幾分か歯根が吸収されて短くなることがあります。特に生活に支障がない場合が殆どです。
マルチブラケット装置装着 1年8か月後
マルチブラケット装置を装着して、手術後に上下顎が良好に咬合するように排列
外科手術(連携医療機関にて下顎枝矢状分割術(下顎の後方移動)を施行)
外科手術1年後
良好な咬合が得られ、マルチブラケット装置を撤去。下顎を後退させることで顔貌も変更されました。
外科的矯正治療の特長
・通常の矯正治療では難しい症例の治療が可能
・健康保険が適応される
当院が連携している口腔外科(外科手術を担当する医院)
藤沢市民病院 口腔外科 / 横浜市立大学 市民総合医療センターの歯科・口腔外科・矯正歯科
【外科矯正の適応例-1】顎変形症(がくへんけいしょう)
●著しい受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)
●上下の歯が咬み合わない不正咬合(開咬)
●顔が曲がっている不正咬合(交叉咬合)
顎が大きく出たり、逆に引っ込んでしまったり、顔面の変形や咬み合わせの著しい異常を起こしている症状を「顎変形症(がくへんけいしょう)」と呼びます。
これらの症状に関しては、手術は成長が止まってから行いますので、治療が可能になるのはおよそ16歳以後になります。また、外科的矯正治療を行う場合は、手術だけでなく、手術前後に行う矯正治療にも健康保険が適用されます。
ただし、矯正治療に健康保険が適用できるのは顎口腔機能診断施設として認可された医療機関に限られています。当院は、顎口腔機能診断施設として認可されていますので、こういった症状にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
【外科矯正の適応例-2】唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)
●上唇に生まれつきの割れ目(裂)が生じている「口唇裂(こうしんれつ)」
●口腔内上部の口蓋に生まれつきの割れ目(裂)が生じている「口蓋裂(こうがいれつ)」
●口唇裂と口蓋裂の両方の症状が見られる「唇顎口唇裂(しんがくこうしんれつ)」
生まれつき、唇や口の中に割れ目(裂)がある状態を総じて「唇顎口蓋裂(しんがくこうしんれつ)」と呼びます。
唇顎口蓋裂及びその他先天性疾患の治療は、産科・小児科・形成外科・耳鼻科・口腔外科・小児歯科・矯正歯科・補綴科などの専門医の協力のもとに行われます。歯科に関しては、歯列や咬み合わせ異常がしばしば認められ、矯正治療が必要になります。
こういった症例の場合も、通常のワイヤーを使った矯正に加え、場合によっては外科手術を併用した治療を行うことがあります。
治療費の負担を削減する様々な補助制度
唇顎口蓋裂及びその他先天性疾患の患者さんは、上記のように、様々な専門医にかかる必要があり、負担が大きいことから、矯正歯科治療に健康保険が適用されます。また、自立支援医療(育成医療)・更生医療の適用を受けることができます。
これは健康保険の自己負担分の治療費を公的に補助してくれるもので、自治体から指定された医療機関で治療を受けた場合に適用されます。補助される金額は患者さんの家庭の所得状況によって異なりますが、当院は、育成医療・更生医療の指定医療機関でもありますので、該当される方はご相談ください。
自立支援医療(育成医療)とは
18歳未満の児童で身体に障害のある方、または放置すれば身体に障害を残す恐れのある症例などに対して、指定された医療機関における医療を保険適応とし、補装具の購入費の一部も給付する制度です。また、手術を前提にした検査及び手術後の検査についても給付対象になります。
※当院は、自立支援医療に指定された医療機関です。